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デスソース健康法を真面目に考える(2)

デスソース健康法を真面目に考える(1)」では論文の結果を引用しながら、鬱様マウス・ラットに対してカプサイシンを投与することで鬱様状態が改善することを説明しました。

今回はヒトが「辛いもの」を食べることで同様の効果が得られると仮定した上で、実際にどのくらい食べれば抗鬱効果が期待できるのか、を示します。

 

 

 

ザル計算タイム

以下、「概要」で出した「抗鬱作用もとめるには唐辛子ソースをどのくらい摂取したらいいか」の式を計算します。

(1)にも書いたけど、ここまでの話をまとめるとこんなかんじ

 

抗鬱作用を最もよく示すカプサイシンの最低腹腔内投与量

マウス:0.1mg/kg (Hayase, 2011[Reyes-Mendez et al. の解釈で])

ラット:0.05mg/kg (Reyes-Mendez et al., 2018)

 

ヒトのデータは無いため、ヒトでも腹腔内投与量0.1mg/kgで十分と仮定し、されに腹腔内投与と経口投与の違いを無視して、以下考えていきます。これらの問題点はあとで触れる。

 

大体の唐辛子ソースは、含有カプシノイド量は書いてないけれどもスコヴィル値は何処かしらに書いてあるので、計算にはその値を用います。Collins et al.(1995) [as cited in Guzmán and Bosland, 2017]によれば、純粋なカプサイシンは1.6e7 [SHU]なので、激辛ソースX [SHU]の一日必要摂取量(g)は

0.1[mg/kg] * 1.6e7/X * 1/1000 = 1.6e3/X [g/kg]

 

これだと使いにくいので、mLになおします。ソースの比重ですが、今手元にある使いかけのソース(Blair's Sudden Death)は93mLで102gだったので、1.1g/mL。これはたぶんタバスコとかの酢が多いタイプのソースだともっと下がると思うけど、まあ、今回はこれで。また、手元の小さじで計ったところちょうど10滴で2.5mLだったので、0.25mL/滴とすると、(1)の冒頭に書いた式がでてきます:

1.6e3/X [g/kg] * 1/1.1 [mL/g] = 1.5e3/X [mL/kg] (= 6e3/X [滴/kg])

 

軽く試算してみる。うちが今家にあるのはBlair's After Deathなので(Suddenと間違えた)、ここによると、50000  [SHU]。うちの体重が45kgくらいだから、抗鬱剤として使うに必要な量は1.4mL (5滴)。タバスコしか家に無い人はこの10倍必要だから(タバスコは5000 [SHU])、頑張ってね。。だけどタバスコとかただの酢だし、残当でしょ?

 

 

問題点・課題

当然のザル計算はおいておくとして、

1. 対象動物および投与経路の違いによる効果の差異が不明

仮に「ラット」に「腹腔内投与」して抗鬱作用が出たからと言って、「ヒト」が「経口投与」されても同様の結果が出るとは限らない。また、動物種や投与方法による最適投与量の変化を考慮してない。多くの場合経口投与では腹腔内投与時よりも薬物量を増やす必要がある。たぶんこれが一番の問題。

 2. 耐性および反復投与についてのデータが無い

カプサイシンを毎日摂取することによって効果が増減するかについてが不明なので、もともと辛いものが好きな人に望む効果が出るのか(出てるのか)がわからない。

3. 現実の抑鬱状態を反映していない可能性がある

FSTでの無気力状態は厳密には抑鬱モデルとしては不適切との指摘(Molendijk and de Kloet, 2015)。簡単に言えば「無理だって覚えたから泳ぐのやめるようになった」ってだけの可能性がある。 

4. スコヴィル値の正確性に関する問題

同じソースでも、なんか情報源によってスコヴィル値が変わることある。謎。一つには倍の辛さになっても倍のスコヴィル値じゃないってことに気づかず誤解してる人が多いからかも(用語の説明の項に詳しく書いた)。よく辛いもの好きな人のブログとか読むんだけど、大抵間違えてる。

5. 胃が死ぬ

胃が死ぬ。胃が死んじゃう。抗鬱剤飲んでるだけで胃が傷ついてるのに、毎日こんなことしたら絶対やばい。

6. 胃が死んじゃう

大事なことなので。

 

 

全体のまとめ

唐辛子の「辛み成分」であるカプサイシンはTRPV1に作用するが、TRPV1は新たな抗鬱剤のターゲット候補である。

Hayase (2011)によれば、拘束およびニコチン投与によって作製した鬱様マウスの腹腔内にカプサイシンを投与すると、カプサイシン0.1mg/kgで抗鬱効果が強く得られた。また、FSTをおこなったラットについても同様に、カプサイシン0.05mg/kgの腹腔内投与によって鬱様行動は改善された(Reyes-Mendez et al., 2018)。

これらの報告結果から、スコヴィル値X [SHU]のソースを『(体重) * 1500/X  [mL]』あるいは『(体重) * 6000 [滴/kg]』摂取することで、抗鬱効果が得られる可能性がある。これは体重45kgの場合、『Blair's After Death』5滴程度の量である。

ただし、この計算結果は投与経路や投与対象動物、反復投与による効果への影響等を加味していないため、注意が必要である。

あと、辛いものはおいしい。 

 

というわけでみんなもデスソース健康法を試してみてね!!!!! 

 

 

引用文献

*デスソース健康法を真面目に考える(1)で引用した文献も含みます。

Collins, M.D.,  Wasmund, L.M., Bosland, P.W. (1995). Improved method for quantifying capsaicinoids in Capsicum using high-performance liquid chromatography. Hort Science, 30, 137-139. [原文入手できなかったため、Guzmán and Bosland, 2017を参照]

Guzmán, I., Bosland, P.W. (2017). Appetite sensory properties of chile pepper heat – and its importance to food quality and cultural preference. Appetite, 117, 186-190. doi:10.1016/j.appet.2017.06.026

Hayase, T. (2011). Differential effects of TRPV1 receptor ligands against nicotine-induced
depression-like behaviors. BMC Pharmacology, 11, 6. doi: 10.1186/1471-2210-11-6

Madasu, M.K., Roche, M., Finn, D.P. (2015). Supraspinal transient receptor potential subfamily V member 1 (TRPV1) in pain and psychiatric disorders. Modern Trends in Pharmacopsychiatry, 30, 80-93. doi: 10.1159/000435934

Manna, S.S., Umathe, S.N. (2012). A possible participation of transient receptor potential vanilloid type 1 channels in the antidepressant effect of fluoxetine. European Journal of Pharmacology, 685, 81-90. doi: 10.1016/j.ejphar.2012.04.023

Molendijk, M.L., de Kloet, E.R. (2015). Immobility in the forced swim test is adaptive and does not reflect depression. Psychoneuroendocrinology, 62, 389-391.

Porsolt, R.D., Anton, G., Blavet, N., Jalfre, M. (1977). Behavioural despair in rats: A new model sensitive to antidepressant treatments. European Journal of Pharmacology, 47(4), 379-391. 

Reyes-Mendez, M., Castro-Sánchez, L., Dagnino-Acosta, A., Aguilar-Martinez, I., Pérez-Burgos, A., Vázquez-Jiménez, C., Moreno-Galindo, E.G.,Álvarez-Cervera, F.J., Álvarez-Cervera, J.L., Álvarez-Cervera, R.A., Alamilla, J. (2018). Capsaicin produces antidepressant-like effects in the forced swimming test and enhances the response of a sub-effective dose of amitriptyline in rats [unpublished, accepted manuscript]. Physiology & Behavior. doi:10.1016/j.physbeh.2018.08.006

Scoville, W. L. (1912). Note on Capsicums. The Journal of the American Pharmaceutical Association, 1(5), 453–454. doi:10.1002/jps.3080010520