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映画『美女と野獣 (2017)』(ディズニー実写版)感想

ハーマイオニーとCGおばけ』じゃなくて『美女と野獣』リメイク/実写版を、いちゃつくカップルに挟まれながら一人で見てきたので感想を書こうと思う。まとめると『原作(91年版)を見てる人が見に行ったら,ちょっと不満だけど8割満足』ってなるような映画でした。ネタバレ少しするけど1991年のディズニーアニメーションの方を見てたらストーリーは知ってるだろうし、そもそも見てないのなら今すぐツタヤに走ろーね。

 

こう言っては何だけど、元からあんまりディズニー版『美女と野獣』は好きじゃない。フランス怪奇小説感が足りない。自分だったら野獣は人の形に戻るけど死体のままみたいなオチにしたいし、ベルは絶望して自刃してほしい。あるいはベルの死を以てして初めて呪いが解ける、からのロミジュリエンドでもいいかも。と妄想した上で、オリジナルは何十回も、歌も全部歌えるくらいは観てる。

実写版も大まかには気に入った。エマ・ワトソン(ベル)はかわいいし、ルーク・エヴァンス(ガストン)は前から好きだし、ダン・スティーブンス(野獣)はありきたりな感じではあったけど「THE プリンス・チャーミング」って感じでよかった。(フランスって設定なのに)ブリティッシュな訛りも最高。エマの歌は不安あったけどオリジナルに慣れてても全然よかった。旧曲アレンジも概ね最高。あとエマ・ワトソンかわいいって言ったっけ?エマかわいいよハーマイオニー

対して、ガストンの歌はうーん。ルーク・エヴァンス自身は好きなのに、歌い方なのか声なのか、あんまり好きじゃなかった。新曲も一曲除いては旧曲に大きく劣ってたし、特に野獣の失恋ソングは「いらなく無い?」とまで感じた。

 

原作から大きく変わったのは、ベルのお父さんの背景、野獣に呪いをかけた魔女の設定、それに「ディズニー初公認ゲイ」のルフォーの扱いかな。細かい変化、たとえば村人に閉じ込められたときのやつとかは基本気に入った。あ、ただ村の描写の追加はいらないと思いました。

ベルパパのバックグラウンドについて、具体的な地名や歴史上のイベントが出てきてしまったことは不満。「フランスの田舎のどっかの町の女の子」の話だからこそ共感できたのであって、「ベルがパリ生まれ」だの「ペストがうんたら」だのとか言い出して無駄に現実とつなげた結果、ストーリーの持つ普遍性が破壊され「童話だから」という言い訳を無効にしてしまった気がする。あの瞬間suspension of disbeliefが難しくなり、例えばベルがなんで英語の本読んでたんだよとか、田舎娘の普段着がなんであんなにおしゃれで綺麗なんだよとか、黒人の扱いとか、フランス人設定なのにイギリス訛りとか、思っちゃった。当時のフランス人シェークスピアはぎりぎり分かるとしても、アーサー王伝説とか読んでたのかなあ。絶対あの舞台イングランドでしょ、紅茶ばっかり飲んでるし。

魔女をストーリーに絡めるのは好きにすればいいけど、人格を持たせてしまった結果「あのおばちゃんマジでただのサイコパスやんけ」とちらっと思わせる結果とはなった。どうでもいいけど最初の呪いかけるシーンは、ウテナちっくに影絵だと面白そうだなと思いながら見てた。

そして、公開前から話題だったガストンの子分ルフォー。91年版も元々はディズニーがミソジニックだという指摘を受けてベルを「強く独立した女性」と設定した経緯があったので、今回LGBT(GSRM)的な「アップデート」を加えたことは面白い。94年だったか、ドラマ『スタートレックDS9』が女性同士のキスを映した際めちゃくちゃ抗議があったのだけども、そんな歴史を思えば、今回の判断はアナ雪やズートピアと同様ディズニーの意識変化の例として歴史に刻まれるべきだと思う。これが勿論「平等性」をウリにしたプロモーション活動の域をあまりでないだろうことは認めた上でも、評価したいし、ディズニーという世界的なファミリー向け映画生産者がGSRMを肯定的に扱った以上、今後多くのメインカルチャー映画でも意識改革が起きることを期待したいなとは思った。

ただし「女装ギャグ」があったことなど、不満はある。例えば、3人の男が無理矢理に異性装させられて一人が鏡を見てにっこりほほえむ、といった「ギャグシーン」があり、隣のカップルが笑っていた。異性装やドラァグクイーンとかをギャグシーンに使っちゃいけないとは思わないけど、ゲイのキャラを初めて出します!って映画でやることでは無いと思うし、喫煙シーンよりこれを「笑い」とする方がよっぽど「教育に悪い」と思う。そういう意味ではディズニーの今後のGSRM、特にジェンダーマイノリティはどう描かれるのか注目し続ける必要があるのかなとは思った。ストーリーの恋愛至上主義は変わらないし(まあ,そういう映画だしね。。)、歌詞の端々はまだ異性愛主義だし、これでディズニーは100% GSRMフレンドリー!とかは全然思ってない。

 

どうでもいいことを今おもいだした。細かいことだけど、91年版は「青色の服や目=ベル/野獣側」「赤色=ガストン」といった色の使い方がされていたんだけど、今回はベルが真っ赤な服を着ていたシーンがあったので(雪投げ合ったシーンだったかな)、最後の青い目のアップの意味が弱まってしまったというか、原作馴れしてたから違和感あったのかな。

 

総評としては、面白かったし、GSRMに対するディズニーの態度を出してきた記念碑的映画とも、LGBT運動を取り巻く(アメリカ)社会を写した鏡の一つとも言えると思う。ただ、個人的にはその「態度」にやや中途半端なところもあり、アレンジを概ね気に入った上でもオリジナルの91年版を「超える」とは思わず。これは「実写版」の宿命なのだろうけど、「別にオリジナル見直せばいいや」が結論でした。このヴァージョンを見直すことは、多分ほとんどない気がする。まあ、良い「デート映画」ではあると思う。