メルヴィル『白鯨』36章部分訳

「冒涜だと?よく聞け、今度は少し深いところまで話してやる。スターバックよ、俺やお前の目に映るものは、みな張り子の仮面に過ぎん。だがな、俺らが何かするたび、よくわからぬがしかし理性で識りうるものが、自らを混沌たる仮面の裏側へ押し付けてくるのだ、その輪郭をおぼろげに浮かびあがらせてな。いいか、銛を打つのなら仮面の向こうを狙え!壁を突き破らずに囚人が逃げられると思うのか?俺にとってあの白鯨は、目の前に押し付けられた壁だ。その裏は伽藍堂かもしれんと考えることもある。どうでも良いことだ。奴は俺を試す、潰そうとする、測りしれぬ悪意に縁取られた激しい力をちらつかせる。俺はその測りしれぬものを憎み、あの白鯨がその混沌の代理でしか無かろうと、或いはそのものであろうと、ただこの憎しみを打ちつけてやるだけだ。冒涜だと?笑わせるな。刃向かうものは太陽であろうと撃ち落としてやる。」

『チェンジング・レーン』って表記がおもしろい

昨日の夜、映画『チェンジング・レーン』(Michell, 2002)をみた。映画自体は前も観たことがあったし、おもしろいといえばおもしろいけど、好みではない。演技も脚本も悪くないし、後味も良いし、サラッと深いので、「なんか観るかー」ってネッフリ漁るような金曜日の夜に良い映画、程度で感想は留めておく。それよりも、邦題の表記ブレについて、語りたい。

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(dis)connected

  キャパシタみたいな代替可能品になんてなるつもりはない、そんなことを叫んでいるうちに、私は廃材として捨てられていた。数年前の知り合いがセントラル・コンピュータのCPUの一部になったとかマザーの椅子を制御してるとか、そんな話を今日も錆びつきながら聞いている。

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イザヤ14:12-19を訳してみた

KJVを元に翻訳。KJV自体誤訳多いし、これは完全に趣味用の訳。ルキフェルではなくバビロン・アッシリアの話なのは知ってる、KJVはO Lucifer, son of the morning!(Isa14:12)って言っちゃってるけど。

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ウェヌスとルキフェル

 あなたがグラスを輝く砂金で満たしている間、私は自分のそれにピンポン球を詰めている。溜息が聞こえたのかふと手元より目を上げたあなたは「そんなスカスカじゃあ、飛んでっちゃうよ」なんて言いながら、今日もいと高きより私のグラスに異物を混入させようとする。うるさいよ、と私はハンドバッグからベレッタを取り出して、腹癒せにあなたのグラスへ向けてやる。吐き出された鉛の塊は、林檎に齧り付くような音をたてながらガラス製のそれを破壊して、慌てたあなたは排尿されるように流れ出る黄金へ両手を差し出す。焦るその姿があまりに滑稽で、頭へも鉛を飛ばそうかと悩んでいれば、勝手に指が収縮し、桃色のナメクジのような脳髄が飛び散った。砂金を巻き込みながら広がりゆく赤い海に、あなたのことやっぱり好きだったのかななんて思ったりしてみるけれど、でもナメクジは嫌いだし、ナメクジが頭に詰まったあなたも気持ち悪いし、それに、買ったばかりのヘイディースのヒールが汚れちゃったじゃない。

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