21gのとしょかん

ヒトの命なんて,所詮21gしかないの。

『君主論』メモ <3>

3. では、君主の民衆に対してとるべき態度を述べています。ここでも『人は裏切るものである(人は自己の利益を追及する)』ということが、強く意識されているように思います。3(i)『統治のためならある程度悪徳にもとづいて行動する必要がある』はいわゆるマキャベリズムを表しているととらえる人も多いです、賛否はいろいろあるみたいだけど。個人的には、彼の『目的』がイタリア統一であることや時代背景を考えれば『目的のためならどんな手段を講じてもよい』は拡大解釈しすぎなんじゃないかなーって思いますがどうなんだろ。( <感想/解釈> も参照のこと)

<目次>, <PART 1>, <PART 2>, <PART 3>, <PART 4>, <感想/解釈>


3. 君主の民衆に対する態度について (XV - XXIII)

i) 『悪徳』な行為について

理想的な『いかに生きるべきか』にのみに従っていれば、悪意をもつ人々の間で破滅せざるを得ない。できる限り理想に従うことは重要であるが、しかし国の維持にのためには『悪徳』をおこなうことが必要である場合もある。ただし、『徳』に欠けている発言をすることは避け、大衆によい気質(特に信仰心)を備えていると思わせることは大切である。

そもそも、民衆は君主に直接接触できないため、行動そのものよりも主に結果から君主を評価する。このため、国を維持することができれば、その手段も立派であると評価されやすい。

a) 許容される『悪徳』の例 (XVI - XX)
イ)『ケチ』であること (XVI)

『気前が良い』という美徳を保つために自らや国の財産を使い果たしてしまうおそれがある。その結果領民を重税で苦しめざるを得なくなるか、貧しくなってさげすまれることとなる。むしろ『ケチ』だという悪評がたっても、十分に節約し、民衆へ負担をかけずに戦争をおこなえるほうが良い。

Q-1. カエサルは鷹揚であったが、成功したのはなぜか
A. カエサルのように君主の地位に就こうとする途上である場合、民衆に鷹揚であると思われることは重要である。しかし、いったん君主の地位に就いたのちは、濫費は有害である。

Q-2. 名君の内のも鷹揚であるとの評があるものがいるのはなぜか
A. 彼らはが気前よく与えたものは征服した地の財産に限った。これは確かに見習うべきである。しかし、彼らが自身や領民の財産は出し惜しみしたのは変わらない。

ロ) 『冷酷』 であること (XVII)

憐み深過ぎて混乱を招けば全領民が苦しめられる。『冷酷』と評されても、一部の個人を残酷に傷つけて領民を結束させたり忠誠を誓わせたりできるほうが、望ましい。特に軍隊の指揮の時は、むしろ『冷酷』と恐れられることが望ましい。ただし、軽々しく相手を疑ったり信じたりするのではなく、落ち着いて冷静さと人間味をもった行動をするべきである。次項も参照のこと。

ハ)恐れられること (XVII)

民衆が君主を愛するのは民衆の意志に基づくため、民衆に不利益の生じそうな場合は裏切られてしまう。しかし、民衆が君主を恐れさせるのは君主の意志によるものであり、民衆に不利益の生じそうな場合でも処刑への恐怖を感じさせることによって裏切りを防ぐことができる。

ただし、たとえ恐れられるにせよ、決して恨みを買わないようにする必要がある。また、残酷な手段を取るときは、然るべき動機と適切な口実があるときにのみ限るべきである。

ニ) 奸策をめぐらすこと (XVIII)

信義を守る君主が好ましいと一般的にされるが、歴史を見れば、奸策をめぐらした君主のほうが成功をおさめている。そもそも人間は邪悪なものなので、自身に不都合な場合約束を反故にされるし、また自身も不利益を被るのに信義を守る必要もない。たとえ反故にしたとしても、その口実はいくらでも作れるものである。ただし、他者には信義を守る君主であると思わせる必要はある。

※そもそも戦いに勝つためには『法(人の道)』だけでは足りない場合があり、これを補うためにしばしば『力(獣の道)』が必要である。『力』は、更に『武力(ライオン)』と『奸策(狐)』にわけられるが、例えばライオンのみでは『罠』を見破れないし、狐のみでは『狼』との戦いに勝てない。


ii)恨みや蔑みについて (XIX)

君主は絶対に恨みや蔑みを避けるべきである。これらは国を滅ぼしてしまう。また、大きな憎しみを感じさせられた人間は、自らの死を恐れず君主を殺そうとすることもある。逆に、これらを避けて民衆の信望と尊敬を得ることができれば、臣下は民衆を敵に回すことを恐れて謀反しない。

※君主の敵は臣下のほかに外敵がいるが、十分な軍備があればよい味方も付きやすく、さらに外交関係を安定させればほとんど問題ない。

a) 恨みや蔑みの避け方

恨みは財産や名誉、婦女子に手を出さないようにすることで避けられる。特に、家族等の生命よりも財産を奪った恨まれる。また、貴族を追い詰めず、かつ民衆を満足させることも大切である。たとえばフランス王国は第三者機関に貴族を抑えさせている。

※悪行に限らず、例えば味方にしたい集団が腐敗している中であえて善行をとってしまえば恨まれることもある。

軽蔑は、臆病さや決断力のなさを見せないようにして避ける。また、臣下に、君主を騙したりなどすることはできないと思わせることも重要である。

Q. 高潔で、軽蔑も避けたが反乱にあったり権力を奪われたりしたローマ皇帝が多くいるのはなぜか
A. ローマは貴族と民衆以外にも兵士が多くの力を持っており、彼らを満足させる必要があった。しかし、人民に対して兵士は好戦的で強欲であり、結果彼らの求める君主像は人民の求めるそれと正反対であった。このため、一切憎まれないようにすることは不可能であった。しかし現在の軍隊は当時のように行政と癒着していないため、兵士の扱いは比較的容易である。また、ローマ皇帝たちは、当時最も権力をもつ階層であった兵士を満足させようとしたが、現在はトルコや回教君主国のような例外を除いては民衆が兵士よりも力をもっているため、民衆を満足させることが最重要となる。


iii) 反乱を避けるために行われる様々な政策について (XX)

a) 領民の武装解除

完全に新しい君主国の場合は避けるべき。領民を武装解除をさせれば、君主は自分たちを恐れているか信用していないと思い、憎しみを生む。しかも、武装解除をさせれば兵力は傭兵に頼まざるを得ない。むしろ、領民を武装させれば、その兵力は自分のものとなり、彼らの忠誠心も得られる。また、一部を武装化させ、彼らに特別な恩義を施せば、武装化したものは恩義をかんじし、他の領民も武装化した者たちが危険に合いやすいことを理由にその扱いの差に納得してくれる。

ただし、混成型の君主国の場合、新しい領土の領民たちは武装解除させるべきである。征服時の支援者も徐々に武装解除させ、最終的には旧領土の兵士たちのみに武力を与えるべきである。

b) 諸都市の派閥争いの活発化

避けるべき。弱国が外国勢力と手をつなぐ恐れがある。また、戦時は領民を操りにくい。

c) 敵をつくる

良い。奸策を巡らせ、わざと敵を作りこれを制圧することで、領土を拡大できる。

d) 非協力者の懐柔

良い。むしろ非協力者のほうが最終的に忠誠心のあることも多い。また、彼らもいずれは自己の生活のために、庇護者を必要とすることになるし、悪評を消そうと躍起にもなっている。

※元からの協力者についても、単に元の国への不満から支援してくれていた場合は、気体に答えられないので、味方にしておくべきでない

e) 城塞について

反逆を恐れる場合はある程度有益だが、外国勢力との戦争を想定しているのであれば、占拠される恐れがあるため危険である。ただし、反乱についても城塞を築くよりは民心をつかみ、恨みをさけるほうが大切である。


iv) 支持を得るために行うべき行為 (XXI)

a) 戦争

大きな戦争は領民の心を引きつけられる。戦争にかぎらずとも、君主は大胆でずば抜けた才能を持つという評価を得るべきである。

b) 中立をとらない

いずれかが自分にとって恐ろしい場合でも、加勢したほうが勝てば恩義を得られるし、負けても迎えてもらえる。仮に中立を保っていれば、勝者の餌食となってしまうし、敗者も進んで支援してくれようとはしない。そればかりか、他国も君主を支援する名分がたたない。

いずれも恐ろしくない場合でも、一方を支援することで他方を滅ぼせるのでやはり中立を保つべきでない。

※なお、原則的には自身より強いものと手を組むべきでないが、常に安全策をとることは実際として困難である。重要なのは最も害の少ない策を取ることである。

c) 市民の扱いについて

君主の人間味を見せると同時に威光をしっかりと守る。例えば、実力のあるものを徴用したり褒賞を与えたりすることで、自らが実力者を大切にしていることを示す。また、祭りなどを定期的に催し、民衆をこれらに集中させる。その他、様々な集団に属する民衆と折に触れて会合する。


v) 側近たちについて (XXII, XXIII)

a) 秘書官の扱い (XXII)

良い君主は有能でかつ誠実なものを側近とする。膨大な財産と名誉を与えることで、職責を大きくすると同時に、君主なしではどうしようもできないことに気づかせて変革を恐れさせる。このことによって信頼し合える。

b) 意見の聞き方 (XXIII)

一部に、自らが尋ねた時のみに、率直な意見をいうことを認めさせる。率直的な意見に対して怒らないと伝えることで、媚びへつらう者たちを減らせるが、これを一部にのみ認めることによって、君主への畏敬も同時に保てる。認めた者達以外の意見は耳を貸すべきでない。また、いくら立派な進言でも、助言者も自身の利益を考えている以上、最終的な判断は君主自身が下せる必要がある。そして、その決断は絶対に貫くべきである。


0. 『君主論』メモ 目次

1. 様々な種類の君主国と、それぞれの特色 (I - IX, XI)

2. 軍隊について (X, XII-XIV)

3. 君主の民衆に対する態度について (XV - XXIII)

4. 結論/イタリアについて (XXIV - XXVI)

5. 感想/解釈/調べたこと

誤り等ありましたら、しい@sk_ritsにお願いします。

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