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21gのとしょかん

ヒトの命なんて,所詮21gしかないので。

『君主論』メモ <1>

数日にわたってマキャベリの『君主論』を読みなおしたので、まとめる。 自己解釈もかなり入っているかも。 基本的には中古文庫からでている池田廉訳(これ)を使いました。『君主論』の魅力の一つは多分豊富な例なのだろうけど、省きます。(I)などは原文の章番号。

1. はタイトルの通り、様々な君主論の形態と、それぞれの維持にあたって重要な特色を述べています。おそらくマキャベリの注目してるのは、B.(iii-d)『他の市民の推薦によって新君主となった国』であるように見えます。また、4.で述べられるように、彼はイタリアの滅亡の一因を、民衆と貴族の両方の支持を得られなかったことであるとしています (メインは傭兵の使用だけど)。

<目次>, <PART 1>, <PART 2>, <PART 3>, <PART 4>, <感想/解釈>


1. 様々な種類の君主国と、それぞれの特色 (I - IX, XI)

まず、国や領土は大きく、君主国と共和国にわけられる。このうち、君主国はさらに(A) 世襲君主国と(B) 新君主国にわけられる (I)。

※共和国については『ディスコルシ』で論じられており、本書では君主国についてが述べられている。なお、マキャベリ本人は君主制と共和制は両立しうると考えており、また君主制、貴族制、民主制を組み合わせた「混合政体」という共和制を提案していた (『社会思想の歴史』, p. 32)


A. 世襲君主国 (II)

安泰。これまでの風習を疎かにしなければ良く、仮に身分を奪われてもすぐに取り戻せる。憎まれなければ好感を持たれやすく、また長い支配の影響で領民もそもそも革新を求める気質がない。


B. 新君主国

i) 混成型 (III - V)

新旧領土を併せ持つ国。下記の理由により変革が起きやすい:

  • 民衆はより良い為政者を求めがちである
  • 侵攻時の軍事行動等により住民に憎まれやすい

※ なお、侵攻の際は、その地域の住民による支援が大切

また、新領土と旧領土の風習や政治体制の違いによって、統治方法が異なる。

a) 新旧領土の言語/風習が共通である場合 (II):
  • イ) その地域の古い統治者の血縁を根絶やしにする
  • ロ) 法律や税制を変化させ無い
b) 新旧領土の言語/風習が異なる場合 (III):
  • イ) 現地に移り住む
  • ロ) 拠点となる数カ所に移民を住まわせ、兵士とする
  • ハ) 近隣の弱い国々の庇護者となり、また強国の勢力を弱める努力をする

(イ) について、暴動等の情報が手に入りやすく、また民衆の不満や訴えを聞き入れやすくなる。この結果民衆の畏敬を得られやすく、これはすなわち敵国の侵攻を困難にさせる。

(ロ) について、移民兵は駐屯兵に比べて経費が安く、忠義心が厚く、また、移民先の土地に住んでいた数人以外に損失を与えにくい。移民兵に土地等を奪われた者達は困窮するため反乱を起こし得ないが、駐屯兵では住民は家で雌伏しうるため危険が大きい。

※ 「民衆というものは頭を撫でてやるか、あるいは消してしまうかしか、そのどちらかしか無い。」

(ハ) について、自国の不満分子が外部勢力を招き入れることのないようにする。また、弱い国々を滅亡させたり、逆に強すぎる権力を与えたりしないこと。

Q. ダレイオス王国がアレクサンドロス大王の征服後も謀反が長く起きなかったのはなぜか (IV)
A. 君主国の統治様式が維持に適していたから。統治様式は下記の二種類ある:

  • イ) 君主+公僕型
  • ロ) 君主+諸侯型

(イ) は公僕は君主に隷属し団結してるため攻めにくい。ところが、その軍隊を打ち砕き、君主の血統を根絶やしにすれば、民衆の信望を集める人は誰も居ないため維持は比較的簡単である。 (ロ) は諸侯はそれぞれある程度独立している。彼らのなかには常に一定数の不満分子が存在するため、それを足がかりにして攻めやすい。その一方で諸侯の反乱の危険性が有るため維持が困難である。ダレイオス王国は(イ)に該当する。このため、アレクサンドロス大王は簡単に領土の維持が行えた。

c) 元の国が共和制国家であった場合: (V)

取りうる対策は下記の3つである:

  • イ) 滅ぼす
  • ロ) 君主がその地域に移り住む
  • ハ) 国内に寡頭政の政権を作らせる

これらのうち、(ハ)を選択すると、すなわち従来の寡頭政権を認めると、民衆は不満のたびに過去の自治に期待をかけるため不安定である。君主がその地域に移り住んでも良いが、上策は(イ)滅ぼすことである。


ii) 謀反が起きた国を再奪取したもの (III)

維持しやすい。謀反者の取り締まりや弱点の補強を行いやすいから。


iii) 領土のすべてが新しいもの (VI - IX)

※ここでマキャベリは彼が歴史上の偉人を例に取ることについて、『並外れた偉人を規範とするべきである』からであると言っている。

そもそも、領土の手に入れ方は以下の4種類ある:

  • a) 主に実力(virtù)で手にする (VI, VII)
  • b) 主に他人の力または運(fortuna)で手にする (VI, VII)
  • c) 市民の殺戮など、悪しき行為によって君主となる (VIII)
  • d) 他市民の推薦によって君主となる (IX)
a, b) virtùまたはfortunaで手に入れた場合

virtùで君主となるほうが望ましい。そもそも征服で最も大きな障害は「新しい制度の導入」である。理由は下記の2つである:

  • イ) 旧制度に不満のなかった領民は敵対してくる
  • ロ) 新領民のうちの支援者も、上記のような新領民への恐怖心や新体制への猜疑心を感じているため、裏切りやすい

また、いったん新制度を導入できても、民衆は気質が変わりやすいため維持することは困難であるため、反逆者を「説得し続ける」ための実力が必要である。しかし、virtùでなくfortunaに恵まれたり他人の好意でのし上がった場合(すなわちbの場合)、下記の点で問題である:

  • fortunaも好意も変化しやすいため、いつまで続くかわからない
  • 命令の仕方も知らず、また信用できる部下もいない

ゆえに、速やかに、これらが変化しても維持できるよう用意を行うか、あるいは君主となる前にその準備をしておく必要がある。

c)残虐な手段で君主となった場合(VIII)

その功罪は別として、このような場合、必要な加虐行為は一気に行うこと。逆に恩義は小出しにすること。これを逆にすると民衆も臣下も安心感が持てず、その結果君主も臣下を信用することができなくなる。

d)市民の推薦で君主となった場合 (IX)

d) について、これはさらに以下の二つの場合に分けられる:

  • イ) 貴族の推薦による場合
  • ロ) 民衆の推薦による場合

それぞれの目的について、前者は貴族が民衆を抑圧するための隠れ蓑を作るためであり、後者は貴族の抑圧に対抗するための民衆の庇護者をつくるため、である。これらを比較すると、民衆の推薦による場合のほうが維持がたやすい:

  • (イ) の場合、貴族たちは自らを君主と対等だと思い込んでいるため、命令がしにくいから
  • 民衆の願望はかなえやすいが、貴族の願望は第三者の権利を抑圧しなければ叶えられないから
  • 貴族に比べ民衆は多数であるため、民衆を敵に回すよりも貴族と対抗するほうが楽だから
  • 貴族はしたたかだから、敵にいったん回しても、すぐ勝ち目のあるほうにつくから
  • 貴族はその声望を与奪できるが、民衆の顔ぶれは変化しないから

実際に統治する場合、(イ)、(ロ)のいずれにおいても民心をつかむことが大切である。(イ)の場合、民衆は危害を加えられると君主を恐れているため、逆に恩義を与えることで(ii)の場合よりも深い好意を得られる。(ii)の場合、民衆は抑圧されないことを望んでいるだけなので民心は得やすい。また、周りの貴族たちについて、忠誠で、かつ強欲でないものは大切にすること。忠誠でなくとも、単に小心者で君主とのかかわりを避けてるだけのものたちは一部をあえて登用することにより尊敬を得られる。ただし、君主とのかかわりを野心があって避ける貴族は、君主が危機に陥れば敵に回りやすいので警戒する必要がある。

なお、このような国は、共和制から専制へと移行する場合、長官職に政権を奪われる恐れがある。これは君主よりも長官の意志が反映されやすく、また民衆も君主ではなく長官の命令に従うことに慣れているからである。そのため、市民にその君主と政権が必要であると感じさせておかなければいけない。


iv) 教皇国 (XI)

いったん征服してしまえば、維持にはvirtùもfortunaも不要である。教皇国は伝統/宗教に支えられており、臣民も外敵も関心を持たないため安泰である。

Q. ローマ教皇が権威をもつようになったのはなぜか
A. 財力と武力をもとに教皇アレクサンデル6世がヴァレンティーノ公を支援した結果、ロマーニャ地域がすでに手に入っていた。教皇ユリウス2世がさらに勢力を拡大した。


0. 『君主論』メモ 目次

1. 様々な種類の君主国と、それぞれの特色 (I - IX, XI)

2. 軍隊について (X, XII-XIV)

3. 君主の民衆に対する態度について (XV - XXIII)

4. 結論/イタリアについて (XXIV - XXVI)

5. 感想/解釈/調べたこと

誤り等ありましたら、しい@sk_ritsにお願いします。

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